渡りルート全国追跡プロジェクト
Keywords
渡り、渡り経路、生活史進化、鳥類、バイオロギング、ジオロケーター、
GPS、共同研究プロジェクト、市民参加型研究
Study species
アカモズ、ノビタキ、キビタキ、センダイムシクイ、モズ、カッコウ、その他日本の鳥類
全国渡り鳥網羅的追跡プロジェクト
鳥類の複数種の渡りルートのうち、類似したものをまとめたものを「フライウェイ」と呼びます。日本列島は世界の渡り鳥の40%が生息する「東アジア・オーストラレーシアフライウェイ」の重要な地域の一つです。しかし、日本の渡り鳥の生態や渡りルートは、ほとんど未解明です。
渡りはどうやって調べるの?
現在主流になっているのは機械を装着して直接渡り鳥の移動を追跡するバイオロギングという手法です(図2)。機械にはいくつかの種類があります。
-
GPS:重さ1g、およそ40gほどの小鳥まで渡り追跡できる。GPSを機械に蓄積する。
-
ジオロケーター:重さ1g以下、10gほどの小鳥まで装着可能。日照時間を機械に蓄積する。
-
アルゴス:重さ2g以上、50g以上の鳥にしか付けられない。GPSデータを衛星通信で送ってくれる。
根気だけでなんとかなるのか?
1と2はデータを機械に蓄積します。すなわち
1度機械を着けたら、1年後にもう一度捕獲しなければいけません。
東南アジアから帰ってきた同じ個体を再び見つけるのがいかに大変か?一度捕まえた個体をもう一度捕まえるのがどれくらい大変か?想像してみてください。根気と知恵比べです。また、小さい鳥には、さらなる細心の注意を払って作業をする必要があります。
私はこれまで地道にこの作業を続けてきて、アカモズ、モズ、ノビタキ、カッコウ、キビタキ、センダイムシクイにGPSやジオロケーターを装着して渡りルートを明らかにしてきました。今後も複数種に研究を拡張する予定です。多様性を把握するには種だけでなく、地域も広げる必要があります。
一人で地道に続けるだけでは多様性を把握することはとても困難です。
連携体制を作ろう!
一人では当然限界があります。そこで私は、全国に共同研究者・研究協力者を募り、渡り鳥の追跡をできる研究グループを各地に作る試みを展開しています。主に3つの連携手段を模索しています。
-
私のプロジェクトに賛同してくださる研究者・標識調査員に、共同研究・協力をお願いする。
-
別の方のプロジェクトに参加し、ノウハウをお伝えしたり、調査をお手伝いしたりする。
-
別のプロジェクトリーダーと連携し、相補的にデータを収集する。
連携体制のキックオフ
2023年9月にはこのためのキックオフ集会を日本鳥学会で開催しました(図3)!100人以上の参加があり、多くの方に興味を持ってもらいました。これを皮切りに多くの人が参画できるプロジェクトを運営していきたいと思います。
図1 現在追跡を進めている渡り鳥の例
左上:アカモズ、右上:センダイムシクイ
左下:キビタキ、右下:ノビタキ
図2 鳥類のバイオロギングに用いる装置(黄枠)。
上左:GPSを装着したモズ
上中央:ジオロケーターを装着したアカモズ
上右:ジオロケーターを装着したノビタキ
下右:2020年~2021年の渡り経路を調べたアカモズ
図3 連携体制のための自由集会の様子。多くの人にご参加いただきました